『FLOWORDS』Vol.1




 『FLOWORDS』Vol.1
   サークル名:双葉文学カフェ


 第十一回文学フリマ
   開催日:2010年12月5日(日)11時〜17時
   会場:大田区産業プラザPiO 小展示ホール(エ-19)
   公式サイト:http://bunfree.net/


   価格:500円







目次


 虚構に拡張する身体、常にすでに語られた行為――「メタルギアソリッド3」論/仁禮愛
 『僕と、僕らの夏』論――失恋する恋愛ゲーム/良野通
 始まりとしてのモテ期――『モテキ』論/まわた


特集 現代の小説が描く〈繋がり〉の諸相
 ロスジェネ・イズ・デッド――山崎ナオコーラ「この世は二人組ではできあがらない」論/ヘルプライン
 〈書評〉高橋源一郎『「悪」と戦う』 決断主義のはるか先で――「戦う」者の交代/仁禮愛
 『僕は友達が少ない』論――現代社会における人間関係再構築の一側面/良野通
 スポーツものの文法と感動――もし野球漫画的に『もしドラ』を読んだら/s_mirai


特集 Twitter/ネットの可能性
 “Interactive Live” in Twitter―10年代の始まりにおける平沢進と馬の骨たち―/滄
 討論会 ツイッターで語るということ/双葉文学カフェ
 「ハブ」批判論/本出寿


 〈研究ノート〉画集を〈とじた〉とき、物語は開かれていく―〈虚構を積み重ねて真実に至る〉か?―/コーへイ


 FLOWORDSコレクション/双葉文学カフェ







 本誌「FLOWORDS」は、Twitterの交流関係から生まれた同人誌です。Twitterで知り合った文学系クラスタを中心とした書き手により、ゲーム、マンガ、小説、ネットなどを題材とした、多様なジャンルの評論が集まっています。
 雑誌のタイトルである「FLOWORDS」は、「FLOW」と「WORDS」を組み合わせた造語です。Twitterのことばがそうであるように、各論考は書き手がそれぞれに自らのテーマを掘り下げた独立したものでありつつ、論考同士が緩やかな繋がりを持つものになっています。また、〈繋がり〉をテーマにした論考が多く集まり、雑誌全体として現代における〈繋がり〉を考える内容になりました。
 以下に、各論考のみどころを紹介したいと思います。





虚構に拡張する身体、常にすでに語られた行為――「メタルギアソリッド3」論/仁禮愛
 批評の場で語られてきた「ゲーム」は、ノベルゲームだった。しかし「ゲーム的」という語には、もっと広い意味がある。仁禮は考察の端緒として、アクションゲームの、他メディアには無いインタラクティブな身体性に注目する。『.reviw 001』で『クォンタム・ファミリーズ』論、『.reviw 002』で『センセイの鞄』論を発表した仁禮愛による本格的ゲーム論。ヒット作『MGS3』を通して語られる、「現代の物語」がここにある!


僕と、僕らの夏』論――失恋する恋愛ゲーム/良野通
 『.reviw 001』で「ホワイトアルバム」論を発表した、良野通による美少女ゲーム論。発売時において低い評価しか得られなかった不運な美少女ゲームの構造と主題における画期性を明らかにし、再評価の光を当てる。当時のエロゲユーザーに「失恋」したゲームの「想い」が、いまここに蘇る――。


始まりとしてのモテ期――『モテキ』論/まわた
 誰の人生にも一度は訪れるというモテ期がある日突然あなたの下にもやって来たら……? 今年ドラマ化もされた話題作久保ミツロウのマンガ『モテキ』に登場する、フジくんをめぐる三人の女性キャラ、土井亜紀、いつか、小宮山夏樹の性格と成り立ち、心理を徹底解剖。作中においてフジくんのアプローチに対してどうしてそのような反応を示したのか深い洞察から解説します。女性心理を知りたい方は必読! これを読めばあなたにもモテ期が訪れるかも……っ!?


ロスジェネ・イズ・デッド――山崎ナオコーラ「この世は二人組ではできあがらない」論/ヘルプライン
「論者はこの小説の語り手が持つ二重性に着目する。語り手は、自らを絶対化しつつ、しかしその言動の内に、相対化する契機を孕んでいる。タイトルもまた然り。問題なのは「この世」に適応しない「二人組」なのか、「二人組」を許容しない「この世」なのか。ロスジェネ世代の背負う宿命から、<セカイ系>と<決断主義>の間で揺れる現代社会の問題へ。『この世は二人組ではできあがらない』を貫く軸を、明晰な筆致で取り出した名論。


〈書評〉高橋源一郎『「悪」と戦う』 決断主義のはるか先で――「戦う」者の交代/仁禮愛
 決断主義の先で、文学は、10年代にあるべき物語を紡ぎ始める。高橋源一郎『「悪」と戦う』(河出書房、2010年5月)は、ランちゃんという子どもが、「悪」に立ち向かっていく。この物語は、東浩紀クォンタム・ファミリーズ』(新潮社、2009年12月)と共通する次世代への想像力を有している。だが、そこで提示された答えは、彼の示したものとは、また少し、異なるものだった。


僕は友達が少ない』論――現代社会における人間関係再構築の一側面/良野通
 今年の『このライトノベルがすごい!』で第2位となった、人気ライトノベル僕は友達が少ない』。この小説を読んだ読者なら誰もが思うであろう素朴な疑問、「隣人部の部員は友達ではないのか?」を出発点に、『はがない』で語られる「友達」観の裏表を透徹した論理で洞察。『はがない』の歴史的意義を〈問い直す〉。


スポーツものの文法と感動――もし野球漫画的に『もしドラ』を読んだら/s_mirai
 100万部の売り上げを達成したベストセラー、岩崎夏海もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を、ビジネス書とは異なる観点から読み直す意欲的な評論。『もしドラ』における野球漫画の文法を検討するとともに、程高の野球戦術の有効性を実際の野球チームの戦術と対比しつつ検討。野球ファンにとっても面白い読み物になっています!


“Interactive Live” in Twitter ―10年代の始まりにおける平沢進と馬の骨たち―/滄
 「間違えてないか?私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」――同じ「平沢」という苗字、そして同じ「隹」の部位を持つ名前。滄はここで、固有名が〈同じ〉であることが生んだ、twitter上の祭りを紹介する。「馬の骨」たちが見たのは平沢進その人でもなければ、平沢唯というキャラクターでもない。「平沢」という〈同じもの〉が、新しく意味を受け取っていく中で、どういった事態が生まれたのか。本稿ではそこに、現実を「ひっかき回す」可能性を見出す。


討論会ツイッターで語るということ/双葉文学カフェ
 ツイッターを介して繋がった「FLOWORDS」の同人が、ツイッターについて語り合った討論会です。トゥギャッター、実況、ツイッター中毒、インプットとアウトプット、「空気読め」という圧力、「誤読」と「誤配」、アイコンの効果といった話題を取り上げ、ツイッターのメリットとデメリットについて、それぞれのツイッター経験を下敷きに議論を戦わせています。


「ハブ」批判論/本出寿
 多くのノードを繋ぎ、自由で平等な社会を生みだすかに思われるハブは、しかし、下位ノードから搾取し、ハブ性そのものを目的化する構造を隠し持っていた。ハブに潜む平板化と不平等を排し、「かけがえのない」関係を取り戻そう――論者はそう呼びかける。現代社会の病弊に鋭く切り込む意欲的論考。


〈研究ノート・児童文学〉画集を〈とじた〉とき、物語は開かれていく―〈虚構を積み重ねて真実に至る〉か?―/コーヘイ
 物語の<終わり>。そこは、一つの作品が「閉じられる」場であると同時に、あるモチーフが読者の心に「綴じられる」場でもある。物語からもたらされる想像力をもとに、「私たちは「真実」に迫れる」のだと論者は言う。児童文学の分析を通し、論者は物語の魅力を鮮やかに描きとる。


FLOWORDSコレクション/双葉文学カフェ
 双葉文学カフェのメンバーが選んだ、小説、アニメ、漫画、ドラマ、ゲームなど、ゼロ年代に送り出されたおすすめコンテンツのレビュー、23本!

 



 以上、8本の論考と一つの討論会、23本のレビューという内容となりました。
 手に取ってもらって、少しでも楽しんでいただけると幸いです!




 双葉文学カフェ一同


 責任編集:ヘルプライン&良野通
  (お問い合わせはヘルプラインまで。→helpliner(at)gmail.com